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2007年1月12日 (金)

村上春樹『東京奇譚集』(新潮社) 

村上春樹『東京奇譚集』(新潮社) / 2005年09月26日(月)
mixiのレビューに書いたものをそのまま転載。<ちょっとネタバレあります>

こんなに本に引き込まれたのはいつ以来だろう、と思う位集中して読む。ここ数年の村上作品の中では、わたし的にはベスト。
5つの短編が収められている。4編は「新潮」に掲載され、最後の「品川猿」だけ書き下ろし。みんな最初の作品「偶然の旅人」みたいに、作家である僕が人の話を聞いてまとめた、という形式をとるのかと思ったら(『回転木馬のデッドヒート』みたいに)、一つ一つ、語り口も、人称の取り方も違った。しかし、どの作品もすごくいい。村上春樹の短編集は、最近のより昔のが好きで、ずっとマイベスト短編集は『中国行きのスロウ・ボート』だったのだが、今回はそれに匹敵する魅力があった。
親子の相克とか、生きることの辛さとかは、こちらが年を取ってきたせいか、昔より身に迫るものがあり、村上春樹の小説の登場人物として、小ぎれいでおしゃれで、現実感がなくて、という感じでなくなってきたのに、非現実的な世界にトリップしている感じがたまらない。そして、登場人物たちがみんな、何かを「引き受ける」選択をしているところが、5つの短編の共通のテーマか。奇譚、というぱっと見グロテスクな表象の世界にとらわれず、何かを受容し、そのことで自分自身が救われる部分が、かくもわたしの心に響いたのか。
3編目「どこであれそれが見つかりそうな場所で」では、主人公は依頼主の探していたものを見つけられずに終わるが、これは、何か、もっと長い物語への布石なんだろうか? ちょっと期待。
逆に、探し物に明快な回答が与えられた「品川猿」は、これで完結してしまったようなさびしさが。
「偶然の旅人」には超常現象は一応ないが、後ろの話ほどミステリアスに(あ、「日々移動する腎臓のかたちをした石」は違うか...)。謎解きをしたいような、でもしたくないようなしてはならないような物語たち。もう一度、噛み締めて読みたい。

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