2006年1月20日 (金)

2001年07月24日(火) 恩田陸『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

三月は深き紅の淵を 三月は深き紅の淵を

著者:恩田 陸
販売元:講談社
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タイトルちょっと覚えにくくないかい?、と思った。
まぁ、タイトルも雰囲気のうちですが。
『三月は深き紅の淵を』という、幻の本があるらしい。
その本が幻かどうかは、この物語の主題ではない。
この物語が語っているのは、この本をさがしている人の話だ。
恩田陸は、自分を語ることの極端に少ない作家のように思われる。独特の味わいのある小説を、文庫になった端から読んでいるところだが、本人については何もわからないも同然できた。
それが、この『三月は深き紅の淵を』の最終章で、自分を投影したかのような作家を使ってぽつぽつと語っている。わたしはこういうのをメタフィクションを呼ぶことが多い。楽屋落ちとも言う。そういう構造が気にならない作家もいるのだが、この『三月は深く紅の淵を』の第四章「回転木馬」は、ちょっと苦手だった。出来ればこの物語もとことん作家自身を隠して語って欲しかった。メタの部分と絡まり合った「三月の国」の物語が面白かったので、そちらを徹底して語ってほしかった。
第三章「虹と雲と鳥と」(タイトルだけ見ると坂口安吾みたい)は、高校生小説って感じの味わいが『球形の季節』や『六番目の小夜子』を思い出させる。
ミステリ的要素が一番面白かったのは、第二章「出雲夜想曲」。この章もちょっと作者自身が投影されているが、そう思ったのは読了したあとだった。
ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』に捧げられたかのような第一章「待っている人々」は、設定が濃いのに、話が短過ぎて残念。恩田陸ならきっとこの第一章だけでも1冊書けたろうに。この第一章の主人公(?)鮫島巧一の発言が面白かった。「僕は、今の時代、本読む人間は昔よりも憎まれているんじゃないかって気がするんです」だって。講談社文庫版の96ページ。よかったらちょっと読んでみて下さい。こんなもんなのかなぁ?
芳醇な読書の世界を垣間見せてくれているのに、それが100%の効果を示していない、わたしにとっては悔しい1冊。この本から派生させて、もっと面白い小説を読ませて欲しい。

2006年1月18日 (水)

伊坂幸太郎『魔王』

ミステリではないけど、ミステリ的? 伊坂幸太郎という作家がジャンルとしてミステリ作家?、ということで一応「ミステリ系」に入れておきます。

魔王 魔王

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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伊坂幸太郎『魔王』(講談社)読む。今回はこれが直木賞候補でもおかしくなかったのでは? 『死神の精度』は連作短編だが、こちらはつながっている中篇2本。比較するものでもないが、『死神の精度』に見えるテーマは死、『魔王』は全体主義とかファシズムとか、憲法改正とか、国民投票とは何か、ということが表面で語られながら、実際にはもっと違うことをテーマとしている。こちらの方が説明しにくく、おそろしく、美しい。主人公の兄弟、ちょっと『重力ピエロ』を思い起こさせる、別に理想の兄弟じゃないんだけれど、こういう人間関係もあるといいのに、みたいな関係。「魔王」とは一体誰のことなのか。○のことかと思ったら、いや●のことのようでもあり、もう少し読み進めると△のことなのかも、と思い、でも最後まで読むと▲のことなのかも、と驚いたり。宮沢賢治が、こんなにも美しく、おそろしい要素を持っているというのも、宮沢賢治を読むようになって30年余、初めて知ったことだし、色々な意味で衝撃的な本であった。全体主義的傾向については、また、人の意見を引くことが、別の方向の全体主義みたいな気もしないでもないが、自分で語るよりは内田樹のこのblogを引きたい:動物園の平和を嘉す。正直言って、世界がこんな不自由な二分論で分かれているのだとしたら、それはそれで辛いことだが、明晰な指導者がひとりで歴史を作る、ということは、やはりちょっと違うのではないか、などと思ったりも。まとまらなくてすまん。しかも『魔王』の感想とはちょっと違う...。
阪神大震災から11年。10年という区切りを過ぎたせいか、はたまた今日はライブドアの家宅捜査、宮崎勤の上告審判決、ヒューザー小嶋社長の証人喚問等、割と世間をにぎわす種類のニュースが重なったせいか、ニュース等での扱いも淡白で、なんだか静かに1日が過ぎたような気がする。しかし、あれから11年たって、関東にはあれに匹敵する規模の地震はいまだ起きていないが、今この瞬間に大地震が来ないとも限らない、というのは、空恐ろしいことである。

2006年1月 6日 (金)

2001年06月25日(月) 東野圭吾『秘密』(文春文庫)

秘密 秘密

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
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映画化されたことでも有名な『秘密』、待望の文庫化。東野圭吾は初読み。
杉田平介は、スキーバスの事故で妻直子を失う。一人娘の藻奈美は、命をとりとめるが、意識不明。娘が覚醒すると、何故か妻の意識が娘の身体に乗り移っている。娘の身体をした妻と、平介は暮らし始める...。

映画のキャストのイメージが強いので(例によってキャストは文末に)、最初、藻奈美が小学5年生である設定に驚いたが、実はタイムスパンの長い物語で、藻奈美は小5から最後は25歳まで成長する。

既に36歳だった直子は、外見上は小学生でしかない。小学生から、再度人生を生き直す決意をした直子は、「自立できる女性になってほしい」と娘に託した夢を自ら実現するため、中学受験し、更に高校で受験しなおし、医学を目指すようになる。学資となるのは、皮肉にも、自分の肉体がうしなわれた際にバス会社から得た補償金だ...。
一方、平介は、バスの事故の原因となった、運転手の過密勤務の原因を探る。死んだ運転手は、妻にも隠して何にお金を遣っていたのか?
また、高校生になった妻の異性関係を平介は疑うようになる。娘の姿をした妻の高校生活への嫉妬...。
さまざまな要素が絡み合いながら、時は流れ、色々な関係者が、色々な人生の新天地へ進む...。

急に、自分の心と異なる身体にやどることになる戸惑い、という面では、北村薫『スキップ』の方が微細に描いていて、上手かったが、まぁ、この物語の主役は直子ではなく平介だし、そこが肝ではない、という感じか。
あと、双子の親として大変気になったのが、バス事故で双子の娘をうしなった男性のエピソード。被害者の会で、彼はこう言う。「同じ死に顔をしていました」「どちらか一方でも生き残ってくれればね、もう一人のほうも一緒にいるような気になれたと思うんですけどね、」これは、双子の親やったことのない人の書く大嘘です! 些細なことなんだが、この書き方は許せん。特にこの双子の父親は物語の終盤でまたちょっとしたエピソードがあるだけに、ますます違和感があるなぁ。

と、ちょっとけなしてみましたが、ラスト、「秘密」の意味がわかる部分にくると、じわーーーーと込み上げてくるものが止められず、電車の中で涙をしぼってしまったわたしだった。やはりこれは一つの名作ではある。
さて、行あけて映画のキャストを書くので、ネタバレ了解の方だけご覧下さいまし。




















平介:小林薫
直子:岸本加世子
藻奈美:広末涼子
(あとは知らないっす~)



2005年12月26日 (月)

歌野晶午に心地よくだまされよう

友だちに借りていた

正月十一日、鏡殺し

(残念ながら報酬対象外)

を読んだ。短編集なんだけど、どれもあっと驚かされる仕掛けの施されたミステリー。

歌野晶午の名前を一気に有名にしたのは、2003年「このミステリーがすごい!」で年間1位に選ばれた『葉桜の季節に君を想うということ』。わたしも初めて読んだのはこの本。

葉桜の季節に君を想うということ 葉桜の季節に君を想うということ

著者:歌野 晶午
販売元:文藝春秋
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これはやられた! 読者をけむに巻く感じが、ちょっと筒井康隆『ロートレック荘事件 新潮文庫 』と似ているかなー、と思ったが(最後に焦って、ページを戻して、自分がどこで躓いたかを探してしまうところとか)、でもパクリとかそういうのではなく、小説の仕掛けを、最後で満喫できた読書であった(但し受け止め方は色々で、そういう読後感を嫌う人もいるらしい、ということがamazonのレビューを読んでいるとわかる)。

このドライブ感が味わいたくて、次々と歌野晶午を読んでみた。どれも、読書の楽しみを味わわせてくれる好著。

女王様と私 女王様と私

著者:歌野 晶午
販売元:角川書店
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最新刊。現実世界の陰惨な事件を思い出させてちょっと辛い...。

さらわれたい女 さらわれたい女

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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藪の中、みたいな、視点くるくる小説。

魔王城殺人事件 魔王城殺人事件

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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場のしかけを楽しむ本。

ブードゥー・チャイルド ブードゥー・チャイルド

著者:歌野 晶午
販売元:角川書店
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過去世とか、インターネットとか、色んな要素をえいやっと、理屈でまとめる、一瞬トンデモ本にも見えるミステリー。へいへいほー。

放浪探偵と七つの殺人 放浪探偵と七つの殺人

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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2004年6月の日記より:問題篇と回答篇を分けて載せ、読者にも考える時間を与えようとしている趣向だが、わたしは結局、問題篇読んですぐ回答篇を読んでしまう無粋な読者に。わたしにもわかった謎もあれば、全然わからないのもあり。バラエティに富んでいて楽しく読む。

Rommy―越境者の夢 Rommy―越境者の夢

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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ミステリーは殺人の謎解きだけではない! あっと驚いた。言われちゃえばそうなんだけど...みたいな。

世界の終わり、あるいは始まり 世界の終わり、あるいは始まり

著者:歌野 晶午
販売元:角川書店
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2004年8月の日記より:入間・飯能近辺で連続して起こった小学生誘拐殺害事件の、あっと驚く犯人と家族のねじれた苦悩、それをたたみかけるように描く、展開の読めない小説。相変わらず、歌野晶午の小説は、作中人物に対してではなく、完全に読者に対して謎解きの挑戦をしている。わかって読んでいても、先が全然読めない。そして、タイトルは、どんどん悲惨になっていく物語に、最後に希望の光を差し込ませる、ひとつのヒントだった。ふううん。

家守

著者:歌野 晶午
販売元:光文社
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ちょっと既視感のある話もあったが、それぞれにつながりのないミステリーがぱらぱらと収められている。

ジェシカが駆け抜けた七年間について ジェシカが駆け抜けた七年間について

著者:歌野 晶午
販売元:原書房
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2004年6月の日記より:歌野晶午は、で、作家が仕掛けたどういうわなで、そういう謎がかけられるの?、ってのが気になるので(読者にとっては謎でも作中人物にとっては謎でないことがキーとなる)、最後にどうやって読者に種明かししてくれるかが楽しみで必死に先を急いでしまうのだった。いやー、色んなこと考えるよねぇ。

2005年12月21日 (水)

上と外(1)~(6)

上と外〈1〉素晴らしき休日 上と外〈1〉素晴らしき休日

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
Amazon..jpで詳細を確認する

本棚爆撃」より転載

2001年09月02日(日) 恩田陸『上と外』1~6(幻冬舎文庫)

わたしはかつて、スティーヴン・キング『グリーン・マイル』(新潮文庫)も、毎月新刊が出るたびに買っておいて、全部揃ってからまとめて読んだ卑怯者である。作者の意図としては、雑誌のように、毎月物足りない位の量を読み進め、早く来月になって続きを読みたい、と渇望して欲しかった筈。でも『グリーン・マイル』が刊行されたのは子育てでばたばたしていた時期だったんだもん、勘弁して~。
『上と外』も、同様のコンセプトで刊行された続きもの。但し、本当に刊行と並行して書き下ろされていたので、2ヶ月に1回の刊行で、しかも当初5分冊と言っていたのが6分冊になった。3と4が「神々と死者の迷宮」上下となっているので、その辺のエピソードが伸びたのだろう。
最初から、完結したら読む、と決めていたので、書評系サイトの感想欄は見て見ぬふりをして読まずにいた。恩田陸というだけで買いだったので、本の帯や裏表紙の梗概も読まなかった。斜めに表紙をツートーンに分けた表紙のデザインが昔の福武文庫みたい、とどうでもいいことを思っただけで全く先入観なしで読みはじめた。

中米G国で遺跡発掘調査をする父を訪れる中学生楢崎練。父と離婚した義母千鶴子と、千鶴子と暮らしている妹千華子も一緒だ。年にほんの10日ばかりの家族の再会が、予想外の事件によって、明日の命をも知れぬジェットコースター的波瀾のストーリーとなる。主人公がはっきりしているので、この6冊の物語が終わるまで、練が死ぬことはないのだろう、と確信しつつ読んだけれど、じゃなければとても彼が生還出来るとは思えなかったほど、過酷な物語。練の超人ぶりは、ちょっと真保裕一『ホワイトアウト』の富樫を思わせる。日本で練たちの無事を祈る祖父や従兄弟ら親族のキャラクターもすごくいいし、恩田陸作品らしく、作者の主張が、様々なキャラクターの口からも、地の文からも伝わってくる。
これまでの恩田陸の物語とは、テーマも舞台も全然違い、スケールの大きさに驚かされたが、風呂敷を広げ過ぎた、という感じは全くなく、詰まるところ悪人が一人も出て来なかったことにも驚かされ、気持ちいい読後感を楽しむことが出来た。中盤からストーリーの格の一人となるニコがまた練以上に超人で、カタストロフィからの脱出の物語があまりにも現実離れしてはいたが、展開はあくまでも寓話の狂言回し、と割り切れば、充分楽しめた。

恩田陸を扱っているサイトを見ると、そのサイトの管理人が、恩田陸のみならず、読書という行為を愛していることが伝わってくるサイトが多くて、本人と関係ない場所ですらすてきなものに変える恩田陸の魔法にまた酔ってしまう。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344400224/nifty0b5-nif1-22/ref%3Dnosim/503-4371433-0383123

上と外〈3〉神々と死者の迷宮(上) 上と外〈3〉神々と死者の迷宮(上)

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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上と外〈4〉神々と死者の迷宮(下) 上と外〈4〉co神々と死者の迷宮(下)

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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上と外〈5〉楔が抜ける時 上と外〈5〉楔が抜ける時

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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上と外〈6〉みんなの国 上と外〈6〉みんなの国

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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